津軽海峡海鳥目視調査 (函館―大間航路)


サンプル

目的


近年、船舶の座礁事故などによる油流出が海洋汚染問題として注目を浴びており、海洋環境、特に海洋生物への影響が懸念されています。
中でも水面や波打ち際など、油の溜まりやすい環境で生活する海鳥類は、最も油汚染の影響を受ける海洋生物の一つであると考えられます。
このような事故が発生した場合、海鳥類の平常時の生息状況が把握されていれば、事故後との比較により被害状況やさらなる被害予測など、
海鳥への影響を推測することが可能になり、速やかな対応につなげることができます。

津軽海峡は日本海と太平洋を結ぶ重要な水路として、中国とアメリカとを結ぶ貨物船をはじめとした大型船が高密度かつ高頻度で往来しており、
日本沿岸の中でも事故の発生するリスクが比較的高い海域であるといえます。
そのような海域において、平常時の海鳥の洋上における生息密度や行動、また海岸への死体の漂着密度を把握する意義は大きいと考えられます。

このような背景から当研究会では2006年10月の発足以来、津軽海峡を南北に結ぶ定期航路を用いた海鳥センサスを行なっています。

調査概要


月2回、津軽海峡フェリーが運行する函館―大間航路に乗船し、出現する海鳥類の種類や数、行動および飛去方向を目視によって記録しています。
蓄積したデータは種ごとに解析を行い、海域や季節ごとの出現、行動の傾向から、どの種がどの時期にどのように津軽海峡を利用しているかを推測します。

調査対象となる種はミズナギドリ目、ペリカン目、チドリ目カモメ科、トウゾクカモメ科、ウミスズメ科の海鳥ですが、その他にもアビ目、カイツブリ目、
カモ目などを含む水鳥類、カマイルカなどの鯨類、キタオットセイなどの鰭脚類についても記録を行なっています。

今後の展望


2012年4月で調査開始から5年半が経過し、これまで蓄積したデータから津軽海峡における海鳥の出現傾向がおおよその形として見えてきました。
しかし、海鳥の出現数は年ごとに大きく変動するため、より正確なデータを得るためにはさらなる継続調査が必要です。
また、2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震による海鳥類への影響が懸念されることから、地震発生以前と以降の比較を行うことで
海鳥への影響を評価していく必要があると考えられます。

さらに2011年度より、モニタリング調査の手法を普及する目的で、函館水産高校の生徒と共同で海岸の漂着死体調査や航路センサスを行っています。
海洋生物として注目されることの少ない海鳥ですが、この調査から海鳥の生活や行動に興味を持ち、さらに海洋環境や調査研究に関心を持つ
きっかけになればと考えています。

海岸漂着物調査

調査概要


七重浜、大森海岸、砂崎海岸など道南地域の海岸を歩き、海鳥類の死体やオイルなどが漂着していないかを調査しています。
また海岸周辺に生息する海鳥類についても、油の付着や異常行動の有無を記録し、周辺の環境に異常がないか確認します。
調査頻度は不定期ですが、毎年4月に日本野鳥の会オホーツク支部によって行われる一斉海岸調査の他、必要に応じて随時行なっています。
また油流出などの海洋汚染事故が起きた場合は現地に赴き、同様の調査を行います。


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